仕事と介護の両立支援制度⑤


育児と違い介護は個別性が大きく、先の見えずらい、先の見通しが立ちにくいものです。

ですから、企業は、仕事と介護の両立のためには、より柔軟な対応が必要になってきます。

そうであるならば、大企業よりも中小企業に向いているとも言えます。

 

確かに、大企業は、人員も資金も豊富です。

従業員の数人が長期の介護休業をとったとしても問題ないでしょう。

大企業が行う「仕事と介護の両立支援制度」には、法定を上回る期間、介護休業を与えたり、介護が終了するまで優遇措置を利用できたりするものも多く見られます。

ただし、それが本当の意味での「仕事と介護の両立支援」となっているかは疑わしい。

ただ、長く働き続けることが目的となり、従業員のやりがいの喪失やキャリアアップへの道を閉ざしている制度も多く見られます。

 

そうは言っても、大企業の中には、仕事と介護の両立に必死に取り組んでいる企業もあります。

介護に直面している従業員が、真の「仕事と介護の両立」を実現させている企業もあります。

だからといって、日本の大多数を占める中小企業に、大企業と同様の施策が取れるわけではありません。

 

中小企業は資金も人材も限られた中で、いかに大切な従業員に「仕事と介護の両立」をしてもらうか、介護離職せず働き続け、活躍してもらうか?

知恵をしぼり、個別性を持って対応することで切り抜けていくしかありません。

今回は、中小企業でも取り組み可能な制度をいくつか紹介します。

 

 

(その1)介護休暇の時間単位取得制度

日常的な介護では、施設への送迎や病院への付き添いなどが多くあります。

その際に1~2時間の介護休暇を取得できれば、仕事と介護の両立が可能となる場合があります。

育児介護休業法では、1年に5日までの介護休暇の取得が可能となっていて、1日または半日単位で取得することができます。

これを、御社独自の制度として、時間単位で取得できるようにするのです。

多少、労務管理が面倒になるとしても、それほど導入が難しいものではないでしょう。

介護休暇中の賃金は、元々、支払う必要はありません。

半日単位での取得制度を設けることは法で定まられた義務ですから、それをあと少しアレンジして時間単位での取得を可能にしてください。

 

 

(その2)短日数勤務制度

育児介護休業法では、家族を介護する従業員のために、次の4つのうちのどれか1つ以上の制度を設けなければなりません。

①所定労働時間の短縮制度

②フレックスタイム制度

③始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ制度

④介護に係るサービス費用の助成

 

所定労働時間の短縮制度(時短制度)というのは、人によってはかなり有効な制度となります。

ただ、介護のために平日丸1日の休みが必要な人もいます。

また、短時間勤務制度によって早あがりする場合には、同じ部署の同僚に申し訳なく思ったり、仕事が中途半端になってしまうことに気が引けたりすることもあります。

そのような時に、平日丸1日休みを取って、残りの4日間は通常通り定時まで働く方が、本人も気が楽だし、部署全体の効率も上がる場合があります。

 

本人およびその人が働く部署の状況によって、短日数勤務制度の導入を検討してみてはどうでしょう。

1日2時間短縮の5日勤務と週4日間のフルタイム勤務、どちらが良いか比較検討する価値はあると思います。

 

 

(その3)相談ルートを複数設ける

初めに述べた通り、介護は個別性が大きいものです。

上司である管理職者が、すべての悩みに答えることは不可能です。

相談窓口を設け知識を備えた人材を育成・配置したり、外部機関に委託したりすることが必要になってきます。

また、介護に関するセミナーや講習を開催して、従業員に介護に関する知識を持ってもらい、どのような場合にどこに相談したらよいかを知っておいてもらうことも有効です。

 

社内に設ける相談窓口は、「仕事と介護の両立」についての相談を受け付けるものとすべきです。

社内制度を伝えたり、どのような制度があれば両立ができるかを相談する場とすべきです。

介護そのものに関する相談は、外部機関(地域包括支援センター、ケアマネジャー、市役所等)の相談先を伝えるようにすれば十分でしょう。

また、相談窓口で介護に関する情報等を取り扱う場合には、プライバシーへの十分な配慮を徹底しなければなりません。

 

 

今回お話した以外にも、御社に合った「仕事と介護の両立支援制度」を検討してみてはいかがでしょう。

 

これから中高年者の多くが直面するであろう「仕事と介護の両立」について、御社が一歩抜きん出ることで、御社の大切な人材を失わないで済むだけでなく、優秀な人材を集められる可能性も広がります。