仕事と介護の両立支援制度④


介護は、ある日突然やってきます。

少し前まで元気だった両親が、脳や心臓の急病や転倒や骨折で、突然介護が必要になったりします。

 

75歳以上の高齢者の23%超は、「要介護」に認定されています。

また、65歳以上の高齢者では、一人暮らしや夫婦のみの世帯が増加しています。

一昔前のような、お嫁さんが主たる介護の担い手で、「家族による居宅での介護」というのは、今では当たり前ではなくなってきています。

 

こういった家族のあり方や価値観の変化の中で、実際に介護離職をする人が年間10万人を超えています。

この10万人のうち2割は男性です。

 

介護離職の理由

介護離職の理由として最も多く挙げられるのは、「仕事と介護の両立が難しい職場だった」というもの。

実際に家族の介護を行いながら働いている人のうちで、介護休業や介護休暇を取った人はごくわずかです。

介護が必要な家族が居るにも関わらず、会社にその事実を伝えていない「隠れ介護」は、多くの企業に潜んでいます。

 

これは、従業員の意識に、プライベートなこと(特に、暗い話題)は職場に隠す傾向が強いことも原因です。

会社が仕事と介護の両立支援制度を設けても、なかなか利用してもらえないのが現実です。

だからといって、会社として何も手を打たなければ、大切な人材が離職していく事態を招きます。

 

両立支援制度を利用しない理由

従業員が制度を利用しない理由をいくつか挙げてみます。

介護休業制度を利用すると収入が減るから。

制度を利用すると、人事評価が下がるから。

自分の今の仕事を代われる人がいないから。

時間制約のある働き方によって、周囲への負担がかかるから。

「介護をするなら仕事を辞めるべき」という職場の雰囲気があるから。

 

会社が取り組むべきこと

まずは、気軽に話し合えたり、相談しやすい雰囲気を作るべきです。

 

次に、業務分担を見直しましょう。

休業者のために負担の増えた従業員への評価が上がる制度が必要です。

従業員の多能工化や複数担当制などの効果的です。

 

さらに、働き方そのものの見直しも重要です。

長時間労働の是正と柔軟な働き方の推進が大切です。

そのためには、無駄な業務の洗い出し・削減や業務の見える化、情報共有が重要となります。

 

両立支援制度導入の手順

最後に、仕事と介護の両立支援制度を導入するための手順について、厚労省のモデルを紹介します。

手順1)従業員の仕事と介護の両立に関する実態の調査・把握

(手順2)従業員の意識やニーズに基づいた制度の設計・見直し

(手順3)介護に直面する前の従業員に対して、両立の意識の醸成や両立支援制度の周知、両立しやすい職場風土づくり等の支援

(手順4)介護に直面している従業員に対する支援

(手順5)全社的な働き方改革への取り組み推進

 

 

 

 

より柔軟な対応が必要

IT技術の進歩でテレワークやサテライトオフィスの導入も容易になってきました。

フレックスタイム制や裁量労働制による柔軟な働き方も可能です。

また、評価制度を改革し、生産性を指標とする評価制度へと変更することも働き方改革につながります。

 

介護は育児と違い、先が見えなかったり、個別性が大きかったりします。

より柔軟な対応が必要とされます。

御社に合ったやり方を地道に模索していくより他はありません。

しかし、その地道な努力が、御社の従業員の幸せと、御社の継続・発展へとつながっていきます。

ぜひ、この努力を続けてください。

 

 

次回は、具体的な取組事例を紹介していきます。